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東京地方裁判所 昭和40年(タ)305号 判決 1968年3月26日

主文

1、原告の請求を棄却する。

2、訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  原告の求める裁判

「原告と被告との間の昭和二七年一一月一七日付東京都新宿区長宛婚姻届による婚姻は無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決。

第二  被告の求める裁判

主文同旨の判決。

第三  原告の請求の原因、被告の抗弁に対する答弁

1、原告と被告とは昭和一二年三月一五日婚姻をし、両名の間には長女洋子(昭和一二年八月二八日生)、長男保博(昭和一六年一二月九日生)、二女伊津子(昭和一九年一月一日生)が出生した。

2、昭和二四年一一月一七日、原告と被告とは協議離婚をした。

3、しかるに当時の原告の自宅(中野氏西町三四番地)には、小学生の長女、長男と原告の母フミが居り、昭和二五年一月一一日母フミは病死し、原告と右二児の面倒をみる者がなくて不自由をし、同年夏、原告の親戚渡辺二郎、高橋正一は、これを見かねて、浜松にいる被告に、家政婦代りとして戻るよう手紙を出して呼び寄せ、被告は二女を連れて上京し、子供の面倒をみることになつたものであり、被告が妻の座に復帰するものでなく、単に家政婦の立場にすぎぬことは、被告も納得の上であつた。爾来原被告は、二階と階下に別々に生活し、危告は昭和二九年夏までの間、被告から、ひどい仕打をうけ、不快な日々に耐えきれず、ノイローゼ気味となり、同年夏ごろから中野の自宅を去り、知人、友人宅やアパートを転々とするようになつた。

4、昭和三四年になつて原告が公務上の必要から戸籍謄本を入手したところ、昭和二七年一一月一七日付婚姻届が提出されていることに気付き一驚したが、当時、子供らは未成年の感受性強い年ごろで受験、進学途上のため、原告は直ちに裁判手続をとることを見合せた。原告には右婚姻届出意思も、婚姻意思もなかつたものであり、右婚姻届を知つた当時は、すでに原告は中野の自宅を去り他に居住していたもので、原告が婚姻届出の事実を知りながら被告と同棲したことはない。

5、昭和三九年にいたり、子供らも成人し、真相を発表しても心配がなくなつたので、原告は、誤解、不合理を解決するため、同年七月一四日東京家庭裁判所に対し婚姻無効の調停申立(同年(家イ)第二八五五号)をしたが、昭和四〇年一〇月二七日不成立に帰したので本訴に及んだ。

6、被告の抗弁事実は否認する。原告は翻意して婚姻意思をもつにいたつたこともなく、追認をしたこともない。

第四  請求原因に対する答弁、抗弁

1、請求原因1は認める。

2、同2は認める。

3、同3のうち、原告の自宅に小学生の長女、長男、原告の母フミがいたこと、昭和二五年一月一一日フミが病死し、原告と右二児らの面倒を見る者がなくなり、不自由をしていたことは認め、その余は否認する。被告の姉竹内三千代は被告の立場を苦慮し、上京して原告方を訪れ、近所の桜井清、石沢二郎らとも相談の結果、やはり被告に帰つてもらう方がよいとのことになり、三千代は浜松から被告を同伴して上京し、被告が原告方に帰宅したのである。被告のため母親代りになつて復縁に骨を折つた三千代が妹を帰宅させるにつき家政婦として帰宅させる筈がない。なお原被告は、結婚当初から別の部屋に寝所をとつていたのであり、性関係は、被告の帰宅後、約一カ月して復活した。

4、同4のうち、昭和二七年一一月一七日付婚姻届が提出されたことは認めるが、その余は否認する。被告は、一度は離婚手続となつたものの、子供らの入学、就職、結婚問題等、その将来を心配し、原告に、しばしば原被告の籍の話をして、籍のことはキチンとしておきますよと念をおし、原告も十分これを諒承し、婚姻届提出につき、こころよく承諾していた。また被告帰宅後しばらくの間、比較的平穏な家庭生活が続いていたのであり、原告も被告や子供と外出したり、ボーナスで、被告や子供らの買物をする相談をしたこともあつた。原告が被告を妻として認めて行動していたことは、原告の勤務先学校に対する届出、税務署に対する届出、国税調査の際の届出等につき、原告が、すべて被告を原告の妻として届出ていた事実からみても明らかである。原告は、女狂いの点につき、被告からとやかく言われるよりは、むしろ、それですむことならと気安く被告の婚姻届の話に応諾したのかも知れないが、今にいたつて偽造呼ばわりをし、婚姻無効を主張するが如きは余りにも身勝手である。

5、仮りに右婚姻届による婚姻の有効性につき、被告の主張するところが認められないばあいでも、本件では、昭和二九年三月ごろ長男の慶応中等部入学の際、また昭和三一年三月ごろ中野区長宛特別区民税申告書提出当時、原告がその追認をしたと認めるべき事案であるから、本訴請求は失当である。

第五  証拠関係(省略)

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